バレエは他のスポーツに比べて、特に脚(膝関節・足首)への負担が高いことで知られています。
大腿四頭筋炎
大腿四頭筋にぼんやりとした腫脹がある状態。大腿四頭筋の伸縮機能の低下に伴い、膝関節の屈曲制限が起こる。レッスンをすると痛みが、安静にすると痛みが消失するという初期症状が現れます。
半月板損傷
ジャンプ後の着地のような膝関節に強い力に、『ひねり』『スライド』のようなストレスが加わることで、損傷が起こる場合があります。
カラダを上下にする動きにより痛みは増強します。半月板に断裂が起きると関節内に半月板の一部がはまり、関節がある角度から伸展できない状態となり、激痛及び可動域制限が起こり、歩行ができなくなるケースも。
内側半月板損傷のほうが、外側半月板損傷より5倍も多く発生するといわれています。
内・外側副靭帯損傷
膝が内側に強い負荷で押し出されるようなストレスがあると、内側側副靭帯が損傷します。(最も発生頻度が多い)逆に、外方向への強い負荷で外側側副靭帯損傷が起こります。
微小な断裂~完全断裂まで受傷度があり、微小な断裂では膝がグラグラするなど不安定感があるものの、レッスンが可能な痛みともいえます。
しかし、この時期に動き・フォームの見直し、ストレッチの徹底、痛みのない範囲での筋力強化を怠ることで、より重症化するリスクが高まることはいうまでもありません。
膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)
急にストップする、膝を強く伸展させる動作の繰り返しで起きます。膝蓋靭帯は、大腿四頭筋が脛骨粗面(お皿の下の硬い所)に付着するところであるため、大腿四頭筋の柔軟性の低下も原因の一つになります。
オスグッド病(オスグッド・シュラッター病)
一般的には、成長痛ともいわれます。(10才~14才位が多発)この時期はまだ軟骨部分が多いので剥離しやすく、急激な練習量の増加が原因の一つに挙げられます。 脛骨粗面を触れると軟骨隆起が頻繁に見受けられます。
大腿四頭筋が停止するのがこの脛骨粗面であり、ジャンパー膝同様に、大腿四頭筋のトラブルが誘因です。
シンスプリント(疲労性骨膜炎)
下腿の骨には、『足首を動かす』『足指を動かす』筋肉がそれぞれ付着しています。
度重なる収縮運動による疲労の蓄積により、脛骨の骨膜にけん引力が過度に加わり、骨膜に炎症が起こるようになります。
シンスプリントといえば脛骨の内側と思うかもしれませんが、同様の症状が、外果(くるぶし)裏や内果の裏にも引き起こされます。
重症化すると疲労骨折するケースもあるため早めのケアが大切です。
捻挫
主に内側方向に捻る内反捻挫(前距腓靭帯損傷)ですが、外反捻挫も起こり、痛み・腫れ・熱感と伴います。
多少の痛みがあってもレッスンを継続してしまうことが、慢性的に違和感や痛みを抱え、足首のみならず全身のバランスを崩してしまいます。
リハビリ・対処法の不十分にはくれぐれもご用心をしてください。
踵骨痛(シーバー病)
10歳前後のお子様によくみられますが限らず、大人にも認められます。
ジャンプ動作の繰り返し、アキレス腱や足底腱膜の牽引力の働きが、下腿の筋肉群の過緊張によって高まること、足関節の捻じれや(回内)アーチの崩れなども要因の一つに考えられます。
アキレス腱周囲炎
アキレス腱は下腿屈筋群が移行しているものです。ふくらはぎ(ヒラメ筋・腓腹筋)の慢性的な筋疲労が症状の背景にあり、そこへ反復的な強度の高いレッスンが重なることで発症します。
又、足関節など、アライメントの異常(内反・回内足・アーチの崩れ)なども大きな誘因です。
有痛性外脛骨
後脛骨筋(ふくらはぎ深部の筋肉)の付着部分で、舟状骨部分が赤く腫れ痛みを伴います。足関節を屈曲位にした時、内側アーチが巻き込まれるような負荷が繰り返されることも原因です。
足底腱膜炎
足底腱膜は、踵(かかと)~足の指の付け根に張っている腱のこと。アーチを形成する筋肉の過緊張、筋力低下や、捻挫歴、踵骨の歪みがあるなどで、何かしらの足首の歪みが原因となるケースが多い。
初期症状は『朝の一歩目に痛む』などであるため、レッスンに支障がなく問題視されないが、放置することで徐々に痛みは強くなっていく。
長母趾屈筋腱滑膜炎
足関節の底屈位動作(つま先立ち)の繰り返しで起こる足の親指の腱鞘炎。
ポアントなどで母趾への負荷が多いため発症の頻度が高い。症状が進行すると、母趾ばね趾(狭窄性腱鞘炎)になるケースもある。また、三角骨症候群と合併して起こることが多い 。
中足骨疲労性骨膜炎
ジャンプによる着地の衝撃が繰り返しされることで中足骨の骨膜に炎症が起きる。足背に腫れがみられ、無理に動作を続けることで疲労骨折をすることがあります。
鵞足炎
膝の内側の、縫工筋(ほうこうきん)、薄筋(はくきん)、半腱様筋(はんけんようきん)=鵞足は束になって、膝の内側を通り、脛骨(すねの骨)に付着します。
条件により、膝の内側部分で、腱(けん)と大腿骨・靭帯が擦れあい炎症が起きてしまいます。
これを鵞足炎といいます。
軽度だと、レッスンを初めた時や、長時間続けてしたときのみ膝の内側が痛いですが、重症になるとバレエをしているときはずっと痛みが出ていたり、普段の生活でも膝の痛みがでたりすることもあります。
タナ障害
関節を形成する組織の一つ、「滑膜」が、膝蓋骨(お皿)と大腿骨の間に挟まって痛みが起きている状態です。
軽度~中度であれば施術での回復も見込めます。
しかし、重度の場合内視鏡下の手術が必要なケースもあります。
ランナー膝(腸脛靭帯炎)
膝の外側(やや上部)にある大腿骨外側上顆と呼ばれる骨が出っ張った部分周囲に痛みを生じます。
初期症状は運動中(特に膝を踏み込んだ時)や運動後に痛み、安静にしていると痛みが消えます。
しかし、症状が悪化すると、歩行時や安静時にも膝の外側に痛みを感じるようになります。
ランナー膝(腸脛靭帯炎)になりやすい人
・陸上競技者、主に長距離(マラソン)ランナー
・膝に繰返し負荷のかかる動作を行っている方(自転車、スキー、登山、バレーボール競技者等)
・ランニング初心者や、下肢(足)の筋力が弱い方
・下肢(足)の筋肉が硬い方
・O脚(内反変形)などで体重が外側にかかりやすい方
こんな人は、腸脛靭帯炎の疑いあり
・運動中・運動後に膝の外側に痛みを感じる
・ある程度の距離を走ると痛みを生じる
・主に下り坂を走る時に痛みが増す
・足(膝)を曲げた状態から伸ばす時に痛みを生じる
変形性膝関節症
主な症状は膝の痛みと水がたまることです。
初期では立ち上がり、歩きはじめなど動作の開始時のみに痛み、休めば痛みがとれますが、正座や階段の昇降が困難となり(中期)、末期になると、安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、膝がピンと伸びず歩行が困難になります。
なぜ膝に水がたまるのですか?
膝の水(関節液)は、関節の滑りをよくするとともに、関節軟骨に栄養を与える粘り気のある液体です。
関節液は関節内にある滑膜という膜から産生され、正常では関節軟骨の表面を潤すくらいのわずかな量ですが、変形性関節症や半月板損傷などにより関節の中に何らかの炎症がおきると過剰に産生され水がたまります。
その他に、骨折や靭帯損傷などの外傷、感染、関節リウマチ、痛風、偽痛風などでも膝に水がたまります。