「貧乏ゆすり」がもたらす効果

医学的な「貧乏ゆすり」の正体

Tarzan最新号の特集は「貧乏ゆすり」
ではなく主役は股関節なれど、股関節を動かすことで、関節包の内側の滑膜から滑液が分泌され、それが動きの滑らかさを助けるばかりか、大腿骨と骨盤の窪みにある軟骨に栄養を供給し、骨同士が直接ふれ合って痛みが出るのを防いでくれます。つまり影の主役は貧乏ゆすりですね。

股関節

いわゆる“貧乏ゆすり”の動きは、以下の改善が期待できることから“健康ゆすり”やジグリング(エクササイズ)とも呼ばれています。
期待される主な効果として、次の2つが挙げられます。

  1. 変形性股関節症の運動療法としての効果
  2. 下肢の血流改善効果

ジグリングとは股関節と膝関節を自分で小刻みに動かす方法で、意識すれば止めることができる自動運動、随意運動に分類されます。 やり方は簡単で椅子に浅めに腰掛け、股関節と膝関節を直角に曲げ、足趾の先を床につけて踵を浮かせて上下させ(片脚づつでも両脚でも可)ます。

変形性股関節症とはどのような病気?

立つ、歩く、座る、しゃがむ、立ち上がる、といった日常生活における主要な動作を担う股関節。胴体と下肢をつなぎ、全身を支えています。

図1のとおり、骨盤のくぼみにある「寛骨臼(かんこつきゅう)」に、太ももの骨の先端「大腿骨頭(だいたいこつとう)」が入り込んだ構造をしています。

股関節をスムーズに動かすためのサポートをしているのが、寛骨臼と大腿骨頭の表面を覆う関節軟骨と、関節包に包まれた関節腔の中にある関節液です(図2参照)。弾力性のある組織である関節軟骨はクッション、関節軟骨に栄養分を運ぶ関節液は潤滑油にたとえられます。

しかし、何らかの要因によって関節軟骨がすり減ってくると、寛骨臼と大腿骨頭のすき間が次第に狭くなり、関節軟骨のクッション作用が低下していきます。すると、寛骨臼と大腿骨頭という硬い2つの骨が直接当たるようになるため、鼠径部などに痛みが生じるようになります。こうして起こる股関節の病気を「変形性股関節症」と呼びます。

◉ 股関節の構造(図1)

◉ 股関節の断面図(図2)

変形性股関節症の人だけでなく、デスクワークなどで長時間座りっぱなしの生活をしている人にもジグリングはおすすめです。

冒頭に挙げた、ジグリングによる「下肢の血流改善効果」が期待できるからです。血流が良くなることで脚の冷えやむくみなどの軽減につながりやすくなります。また、動かさないことで凝り固まりやすくなる下肢の筋肉の柔軟性を高める効果も期待できます。

変形性股関節症の運動療法として行う場合も、デスクワークなどの合間のエクササイズとして行う場合も、無理のない範囲で短い時間から少しずつ始めていきましょう。クセになるほどこまめに行うようにするとよりいっそう効果が高まりやすくなると考えられます。

また、できるだけリラックスした状態で行うこともポイントの一つです。関節液の循環がよりスムーズになり、関節軟骨に栄養が届きやすくなると考えられるためです。なお、痛みが生じたり、痛みが強くなったりした場合は速やかに中止しましょう。治療中の場合は主治医に相談してください。

監修者プロフィール
大川孝浩先生(久留米大学医療センター病院長/整形外科・関節外科センター教授)

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